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「方正地区日本人公墓」の墓参をする人々。
映画のシーンから
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映画は羽田澄子監督のナレーションですすめられる。
「満蒙開拓団の死者のために、中国人が造ってくれたお墓が方正にあることを知りました。日本軍の中国に対する暴行…(その)暴行を受けた中国の人が日本人のお墓を造ってくれたということは、どういうことなのでしょう」
カメラが黒竜江省ハルビン市の方正県に入り、「方正地区日本人公墓」に花をたむける元開拓団員たちの姿を映し出す。両親に連れられて旧満洲の奥ふかくに入植。ソ連の参戦、日本の敗戦がもたらした悲惨な逃避行のなかで失われていく多くの命。体験者の証言にナレーションが重なり、映画はどのようにして日本人公墓が造られたのかという核心に迫っていく。
逃避行の果てにたどり着いた方正で、飢えと寒さに倒れて逝った開拓民の血と涙が浸み込んだ大地。5千人近い遺体の多くは女性だったのだ。公墓を造り、文革中も護ったのは誰だったのか。
映画は最後、方正を14年ぶりに訪れる丸沢恒好さんの墓参の旅を追う。長野県泰阜村から一家をあげて入植したとき、丸沢さんは10歳だった。父は敗戦の1カ月前に現地召集され、母は3人の子どもを救うために中国人と再婚、帰国したのは27年後のことだった。
泰阜村に建つ満蒙開拓団の慰霊碑。開拓移民1144人のうち郷里に帰れずになくなった638人の名前が刻まれている。
■「方正地区日本人公墓」とは
中国・黒竜江省ハルビン市の方正県にある日本人入植者約5千人が眠る共同墓地。1945年8月、関東軍の撤退とソ連軍の侵攻で、旧満洲に入植していた日本人の悲惨な逃避行が始まる。「方正県に軍の食糧庫がある」といううわさで、入植者は方正県に集まった。だが、食べ物はなく、冬を迎え寒さと飢えで5千人に近い死者が出たが、遺骨は放置されたままだった。
63年春、開墾していた残留婦人の松田ちゑさん(91年に帰国)が多くの白骨を見つけ、共同墓地建設を願い出て、方正県人民政府の手で建設された。
■映画はこうして誕生した
『嗚呼 満蒙開拓団』の映画を演出した羽田澄子さんは、「中国残留日本人孤児」の国家賠償請求訴訟の裁判を見守っている間に、方正地区日本人公墓のことを偶然知った。
羽田さんが方正の公墓のことを知るきっかけになったのは「方正友好交流の会」が発行している会報『星火方正〜燎原の火は方正から〜』である。会報は「日本人に公墓の存在を知らせたい」と大類善啓氏(日中科学技術文化センター)、奥村正雄氏(フリージャーナリスト)らが2005年から発行している。
羽田さんが会報を目にしたのは07年3月ごろ。方正友好交流の会では同年8月に方正への墓参の旅を計画していた。羽田さんは公墓のことを知り、映画撮影のために同行したいと申し出た。墓参団に羽田さんのほか助監督、カメラマンらが同行、8月22日から24日までロケを行った。
現地では墓参や公墓周辺を撮影後、残留孤児を育てた養父母らにインタビュー。その養父母の一人が育てた孤児が愛知県にいることも分かった。日本に戻ってから、羽田さんらは方正県にいて日本に帰国することができた人たちを追い、証言をカメラに収めた。スタッフの2度目の訪中は08年5月。羽田さんを含め6人が墓参団に加わった。長野県泰阜村開拓団で入植した丸沢恒好さんも参加した。
こうして、積み上げられた証言がこの映画をつくり上げた。
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羽田澄子(はねだ・すみこ)
『平塚らいてうの生涯』はじめ数々の名作で知られる記録映画監督。大連生まれ。今年83歳
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一般公開を前に 羽田澄子
私は大連生まれで、戦後3年たって日本に引き揚げ、ドキュメンタリー映画の製作に関わることになりましたが、当時、女性で映画づくりに携わる者は本当に少なく、仕事に一所懸命で、わき目もふらずやってきました。それでも、もともと「満洲」生まれですから、「残留孤児」問題には潜在的な関心があったのです。
ハルビン市の方正県に日本人公墓があり、そして公墓建立には周恩来総理の判断があったことを知ってからは、これは何とかして映像化しなければと、構想もないままにカメラを回し始めたのが正直なところです。
つくっていくうちに道が開け、私にとって生きている間にいつかはつくらなければならなかった運命をもった映画になりました。
無我夢中でつくりましたので、見てもらえるだろうか、面白い映画に仕上がっているだろうかといった計算ははたらいていません。ただ、映像のもつ大きな意義は、おのずから見てくださるかたがたに分かっていただけると信じています。
いまの若い人は、自分の国の近現代に何があったのかを知らずにのんきな顔をしてすませていますが、それですむでしょうか。
映画が、いったい日本はどんな近現代史をへて今日があるのか、中国や韓国でどのようなことをしてきたのかを知るきっかけになってほしい。日中友好協会の会員の皆様にぜひ見ていただけたらと願っております。(談)
■全国での上映予定
『嗚呼 満蒙開拓団』は6月13日から東京・岩波ホールで、その後全国各地で上映される。上映初日が決まっているのは次の各劇場。上映初日、劇場名の順。自主上映会などの問合せはTEL3463―7543 自由工房へ。
【7月25日】◇新潟・市民映画館シネウインド◇松本CINEMA SELECT
【8月 8日】◇シアターキノ(札幌市)◇仙台フォーラム◇シネモンド(金沢市)◇シネテリエ天神(福岡市)
【8月15日】◇名古屋シネマテーク
【8月22日】◇横川シネマ(広島市)
【8月29日】シネマe_ra(浜松市)
上映は決まっているが初日未定の劇場。
シネマアイリス(函館市)◇八戸フォーラム◇盛岡フォーラム◇山形フォーラム◇福島フォーラム◇シネマ・ジャック&ベティ(横浜市)◇川崎市アートセンター◇深谷シネマ◇シネマパークたかさき◇第七藝術劇場(大阪市)◇京都みなみ会館◇滋賀会館シネマホール◇シネマ・クレール丸の内(岡山市)◇桜坂劇場(那覇市)
■120分・カラー・スタンダード/自由工房2008年作品/岩波ホール特別鑑賞券1500円/当日一般1800円 問合せ・岩波ホールTEL03―3262―5252
(「日本と中国」2009年6月15日号掲載)
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