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「中国残留婦人」を知っていますか
東 志津 著
岩波ジュニア新書
【820円(税別)】 |
日本人にとって「満洲」そして「満洲国」とは何だったのか。当時の体験者が年々少なくなりつつある今、本書はその解答を与えてくれる貴重な記録といえるだろう。著者は2007年に『花の夢―ある中国残留婦人―』という記録映画を発表した、まだ30歳代後半の本当に戦争を知らない世代である。映画の主人公である栗原貞子さんに作品完成後も取材を重ね、「中国残留婦人」がどのようにして生まれ、今日までどのように生きてきたのか、その壮絶な人生に迫った。
栗原さんは1925年(大正14年)生まれ。小学校を卒業して青年学校へ。卒業の前年、先生から「女子拓殖講習会」へ行くように言われる。「満蒙開拓女子義勇隊」を募るための勧誘活動だが、本当の目的は満洲の開拓団で働く若者たちの花嫁集めだった。がそれは隠されていた。
まっすぐな性格の彼女は御多分に漏れず軍国少女だ。「女性でも満洲に行ってお国のために働ける」と感激し、家族の猛反対を押し切り、渡満した。敗戦の前年だ。
黒竜江省の勃利女子義勇隊訓練所に辿り着いたが、夢はたちまち崩れ去る。集団見合いから合同結婚式を経て3カ月後、栗原さんは妊娠。その矢先、夫に召集令状がきた。
日本敗戦後の地獄の逃避行の末、難民収容所に入るが夫は行方不明のままだ。生まれた子どもと二人で生き延びるには中国人男性との結婚しか道はない。
日本への集団引揚げが始まったが、彼女はそのことも知らずに過ごしてきた。
新中国での大躍進運動や文革体験などの中国現代史の苛酷な一面と、棄民のように彼女たちを置き去りにした日本という「国家の実体」とその酷薄さを、本書で知ることができるだろう。
非情な人生を逞しく生きた女性と、言葉の真の意味でヒューマニティー溢れる、実にやさしい中国人の夫との二人の人生に涙を禁じえない。(大類善啓)
(「日本と中国」2011年10月5日号掲載)
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