僕は留学前に日本で劇団員をしていた際、北京での公演や、中国の現代演劇に触れる機会がありまして、その時の経験が非常に自分の好奇心を刺激するものでしたから、いつか中国の演劇事情を覗きに行きたいという理由で、学校選択の際に第一希望で中央戯劇学院を選ばせて頂きました。
留学当初は、まあ一年という公費留学の期間内では、言葉の問題も含めそれほど深くは観察できないだろうから、こちらの舞台作品や、劇場、観客の質はどのようなものかとかいうことがビジターとしての視点で報告できるようになれればいいだろうなと思っていたんですけど、1月に、こちらで知り合った友人の方に誘われて行ったコンテンポラリーダンスのワークショップで、北京をホームに活動している舞踊団「生活舞踏」の文慧老師に出会いまして、それから5月に大山子の芸術区で行われた国際芸術祭に「生活舞踏」のダンサーとして参加してから、こちらのパフォーミングアートの世界に、比較的深く足を踏み入れることとなりました。その後7月に出演した李六乙演出の「口供」では、今度は北京の中央に位置する現代演劇の現場を体験することが出来まして、1年で予想だにしなかった部分まで、この目に収めることが出来ました。振り返るととても幸運だったと思います。
僕にとって戯劇学院は情報を得る為の掲示板のような場所です。やはり演劇の学校ですから漢語班の中にも芸術関係の志を持った人がいたりします。寮にいる本科生や研究生の中には、自国でしっかりキャリアを積んだ方もいらっしゃいます。今回僕がこちらの舞台にあがるきっかけを作ってくれた友人も過去に戯劇学院で中国語を学んでいた方です。一年経って本科の聴講生への入学も考えましたが現場に出ることができたこともあり、やめにしました。言葉もそうですが、習うより慣れろだと思います。
現場に出ると、予想していたのと違う、幻滅したといったようなことは、正直多々あります。それは舞台に限らずこの国のその他のジャンルの職業でも同じことだろうと思います。おそらく時間に対する概念を始めとして、問題は様々あるでしょう。
幸い僕が今参加している「生活舞踏」はそういった文化の相違による苛立ちを覚えることが全く無いです。時間に対しても非常に誠実です。今は、ここの温かいメンバーの皆さんと一緒に、なるべくたくさんの作品を作っていきたいなあと切に思います。
中央戯劇学院
A.T. |